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2008年5月16日 (金)

映画「靖国」

映画靖国を観てきました。上映中止問題の時にこのブログでも何度か取り上げましたが、ああいう騒ぎになってかえって上映館が増え、渋谷シネアミューズにいたっては上映期間の延長までされるというのは日本の民主主義の底力だと思っていいんでしょうか。たとえ上に乗っかってる人々にはその意識はなくとも、下には言論の自由を支えてる人がちゃんといる。この事実には安心します。でも私たち一人一人が常日頃から自由や権利を意識し守ってゆく努力を怠ればそんなものはすぐに消し飛んでしまうのであり油断はできませんが。

映画はよかったです。別に反日だ上映中止だと大騒ぎするような映画ではなく、靖国とは一体何なのかという問いに対してその答えの一端を見せてくれる映画です。あの程度で反日なんて言われるようなら映画なんて作れないだろう、と思いますね。当時の日本軍に対して批判もダメ、侵略という言葉もダメ、さもなきゃ潰すというんじゃ言論の自由も何もあったもんじゃないですし、私にはあの映画のどこらへんが反日なのかよく分からないということです。

ただ単に負の側面を封殺する事によって過去の戦争を美化し、祖国のために戦い殉じた英霊を祀った靖国神社を絶対的なものとして君臨させたいならそれこそ安っぽいイデオロギーに過ぎないわけで、事実を全部さらけ出してさあ靖国どうなんだという事を考えるには右にとっても左にとっても有益な映画であったと私は思う。全部を一色に染めておかなければ気がすまない人間のヒステリックな批判に耳を貸す必要は別にない。

内容としては台湾の方が合祀取り下げを求めているシーンが一番印象的で、これ以上ないだろうってぐらいの正論なんですね、言ってることが。自分の身内が戦争で死に、その加害国に英霊として祀られるということの理不尽。日本のために戦ってなんかいないのに名誉を押し付けられる。亡くなった人をどう弔うかというのは故人や遺族の意思によって自由に行われるべきものであり、もっとも誰からも干渉されたくない事柄だと思われますが、それに対して靖国神社が国家として介入し合祀の取り下げにも応じない。どう考えても理不尽です。

映画を観終えて総論としてはやっぱり靖国酷いな、と思いました。でもそれはこの映画が反日的な構成になっているからではなく、私自身にそもそも靖国に対するいいイメージが無かったからです。先の九条世界会議の分科会で靖国問題のシンポジウムに参加したのもありますし、そもそも軍国主義の頂点である靖国に対して私が好感を持つというのも考えにくい話ですし。

この映画は個々人の心の中にある靖国を投影する鏡のようなもので、それ自体は反日でも親日でもない。観た人が靖国をどう思っているか、それがそのまま表れてくる映画なんです。

それにしても、靖国は魔性です。侵略戦争なんて無かったという内向きで独善的な思想にはとても賛同できませんが、あれほど多くの人を今なお惹きつけ60年前の映像の見紛うほどの運動が繰り広げられている靖国とは一体なんなんだと、寒心すると同時に興味をそそられます。そう思ってパンフレットを買ったら「もっと靖国を知りたい人のためのブックガイド」が載っていてほくそ笑む。読みたい本読まなければならない本山積みの中ではいつ読めるか分かりませんが…。

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